藤田まことさんが亡くなった。私たち団塊の世代にとって藤田さんは「てなもんや三度笠」の「あんかけの時次郎」として懐かしい思い出とともにありました。東京オリンピックが始まる前、テレビが身近なものになり始めたころとそれが重なりました。
そんな藤田まことさんが再び身近に感じるようになったのは政治部記者になってからです。政治家に藤田さんが演じる必殺シリーズの中村主水(もんど)のファンが本当に多かったのです。中でも大ファンの1人が民主党の渡部恒三・元衆院副議長です。まだ入閣前の旧田中派の中堅だった渡部氏は今でこそ「黄門様」で人気者になっていますが、私たち旧田中派担当記者にとっては渡部氏と言えば必殺シリーズです。
渡部氏はおそらく毎週欠かさず見ていたと思います。九段にあった衆議院議員宿舎へ渡部氏の取材にしばしば行きましたが、必殺シリーズ放送中は一切質問してはならないという暗黙のルールが存在しました。そんなルールを知らなかった私はついはやる気持ちを抑えきれずに「明日の国会は?」などと質問を発してしまいました。あの「おしゃべり恒三」と呼ばれた渡部氏が、黙ったまま。こちらの居心地の悪いことと言ったらありませんでした。そしてCMの時間になると、いきなり渡部氏が「君はどこの社だ。まだルールを分かってねえな」と口を開いたのです。
以来、しばしば渡部氏の部屋で一緒に必殺シリーズを見ることになりました。藤田さんは駆け出しの政治部記者だった私にとっても特別の存在でした。藤田さんの訃報に接して、また時代のページがめくられた思いです。
その渡部氏は民主党の中で小沢一郎幹事長に批判的な政治家の代表格です。最近は小沢氏に対する辛口のコメントも影を潜めているように思えてなりません。何が何でも小沢氏を批判すべきと言っているのではありません。「悪いものは悪い」とはっきりとものを言う「渡部主水」の登場が今の政治には必要なのです。(了)